イスラエルのアパルトヘイト政策と国連における入植地ボイコットに向けた動き

イスラエルアパルトヘイト犯罪

1973年に国連総会で採択されたアパルトヘイト禁止条約(International Convention on the Suppression and Punishment of the Crime of Apartheid)は、アパルトヘイト犯罪を、南アフリカにおける人種隔離政策に限らず、「ある人種グループによる他の人種グループに対する支配を確立・維持し、系統的な抑圧を行うことを目的とした非人道的行為」として普遍的に定義しました。

国連人権理事会の特別報告者であるリチャード・フォーク氏(写真)は、今年1月13日に、被占領パレスチナにおける人権状況に関する報告書(Report of the Special Rapporteur on the situation of human rights in the Palestinian territories occupied since 1967)を提出し、そこで、イスラエルパレスチナ人に対して行っている抑圧政策が、アパルトヘイト禁止条約で述べられているアパルトヘイト犯罪の定義に合致するものであるかどうか、詳細に検討しました。とりわけ、イスラエルが行っている入植地の拡大や分離壁の建設は、アパルトヘイト禁止条約第二条d項にある、「隔離保留地やゲットーの設置」「土地財産の搾取」などによる、人種別の住民分離を意図した処置にあたるとしました。

その上で、イスラエルの占領が「植民地主義」「アパルトヘイト」「民族浄化」という違法な性格を有していることについて、国連総会は、国際司法裁判所に勧告意見を出すよう要請すべきだとしました。これは、フォーク氏の前任者であるジョン・ドゥガード報告者が2007年に出した勧告を踏襲したものでもあります。

(参考)
International court should rule on Israeli “apartheid,” says UN official (Adri Nieuwhof, 02/26/2014)

国連理事会における入植地製品ボイコットに向けた動き

さらにフォーク氏の報告書は、国連加盟各国に対して、イスラエルの入植地や他の違法行為から利益を得ている自国の企業や金融機関の活動を包括的に調査し、入植地製品の輸入禁止を検討すべきだとしました。南アフリカアパルトヘイト体制が国際的な経済制裁によって瓦解した歴史を踏まえれば、イスラエルに対する入植地製品ボイコットは、同国の占領政策ならびにアパルトヘイト犯罪を終結させるための重要なステップであるといえます。

3月28日には、国連人権理事会が、イスラエル入植地に関する決議(Israeli settlements in the Occupied Palestinian Territory, including East Jerusalem, and in the occupied Syrian Golan)を可決し、加盟国が「各国の領土内ないし管轄下にある企業、あるいはその所有・統括下にある企業に対し、企業と人権に関する国連指導原則および関連する国際人権法・人権基準において期待されている行動基準に従い、パレスチナ人に対する甚大な人権侵害に関与したり、加担することのないよう」適切な手段によって促すことを求めました。そして「個人や企業に対し、入植地に関連する経済活動に伴う、財政・風評・法律上のリスクや、個人に対する権利侵害の可能性について情報を提供」するよう、加盟国に求めました。

また、この決議は、昨年1月に発表された国連理事会による入植地に関する国際真相調査団の報告書において要請された事項の実施も求めています。この報告書では、民間企業に対して「入植地から得られる企業利益を終結させること」が求められていました。つまり、この決議は、実質的に入植地製品ボイコットを要請する決議だということができます。この決議に日本政府は理事国として賛成票を投じています。

(参考)
US isolated in latest UN vote on Palestine (Ali Abunimah, 03/28/2014)
UN Human Rights Council resolution warning companies to ‘terminate business interests in the settlements’ or face possible criminal liability gets watered down (Annie Robbins and Hostage, March 28, 2014)

追い詰められつつある入植地ビジネス

パレスチナ人の生活を破壊する入植政策にイスラエルが拘泥すればするほど、同国の国際的孤立は顕著になりつつあります。それは、広範な国際的ボイコット運動に悩まされていたアパルトヘイト時代の南アフリカ、あるいは、1930年代の日本を彷彿とさせるものです。他の民族の犠牲において特定の民族の権益を確保しようとする植民地政策はもはや許される時代ではないことを、イスラエルの入植地ビジネスに関わる人々は認識すべきでしょう。

ソーダストリーム社もまた、国際的なボイコット運動によって経営が揺らぎつつあります。2014年度第1四半期には、北米における売上は昨年比28%の減収、スターターキットの全世界での販売台数は22%も落ち込んでいます。日本での業績も伸びておらず、当初の輸入代理店であったシナジートレーディング社の撤退はソーダストリーム社にとって大きな負担となったことは想像に難くありません。同社の株価も長期低迷が続いています。

現在のところ、日本の百貨店や家電量販店ソーダストリームの取り扱いを継続することで、イスラエルアパルトヘイト犯罪に加担し続けています。日本の市民社会もまた、ソーダストリーム販売を黙認・容認し続けることでパレスチナ人に対する人権侵害に加担しています。人種差別のない世界を実現するために、「ストップ!ソーダストリーム」キャンペーンに是非参加して下さい!


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