ソーダストリーム社、パレスチナ人労働者60人を不当解雇

ソーダストリーム社は、パレスチナ人から奪った土地に建設されたイスラエル入植地内にある工場を「民族共生の聖地」だと美化し、パレスチナ人労働者をイスラエル人労働者と同等に扱っていると主張してきました。つい最近では、「ソーダ専門店」出店中止に際し、ソーダストリーム日本法人が、「工場ではイスラエル人とパレスチナ人を正当に雇っていて両国の平和に貢献したい」などと強弁しています。

確かに、他の入植地企業と異なり、ソーダストリーム工場で働くパレスチナ人労働者はイスラエル人労働者と同一体系の賃金を受け取っているようです。しかし、彼らは最近まで差別的な低賃金で雇用されていました。賃金が改善されたのは、劣悪なパレスチナ人の労働状況が2009年にスウェーデンのメディアで報道されてからのことです。しかも、イスラエル入植地で働くパレスチナ人労働者は争議権は認められていないため、圧倒的に弱い立場に置かれています。

こうした状況を象徴する事件が7月初旬に起きました。ソーダストリーム社が夜勤のパレスチナ人労働者60人を突然一方的に解雇したのです。その経緯は以下のようなものでした。

パレスチナでは6月末にラマダーン断食月)が始まっていました。しかし、ソーダストリームの工場では、ユダヤ教の食事規定に反するものは持ち込めないとの理由で、パレスチナ人労働者はイフタール(ラマダーン中の日没後の食事)を持参することが禁じられ、その代りに会社側がイフタールを提供することになっていました。しかし、ラマダーン3日目の7月2日に準備された食事は、前日までの2日間に出された食事に比べ、余りにも少ないものでした。本来5つのトレイに盛られていたはずの食事が2つのトレイにしか入っていなかったのです。労働者たちが、16時間の断食後にまともな食事を欠いたまま12時間の長時間労働をすることは困難であるし、危険であると責任者に訴えると、彼らは工場内に紛争を持ち込もうとしていると論難された末、結局、そのまま全員自宅に帰らされました。


ソーダストリーム社が7月2日に用意した、断食明けのパレスチナ人夜勤労働者数十人用の食事。右の3皿は最初から空だった。(撮影:パレスチナ人労働者)

その翌朝、労働者達は会社から電話で一方的に解雇を通告されました。イスラエルの労働法では、解雇前の労働者からの聴聞や、文書による解雇通知が雇用者に義務付けられており、明らかな不当解雇でした(2007年、イスラエル最高裁は、入植地で働くパレスチナ人労働者にイスラエル労働法が適用されるとの判決を下した)。労働者らを支援するイスラエルの独立労働組合「WAC-MAAN」は、ソーダストリーム社に解雇撤回を要求し、それが受け入れられない場合は法的措置を取るとしています。他方、ソーダストリーム社は、「食事は質・量ともに十分あったにも関わらず、労働者が突然仕事を拒否し、勝手に帰宅してしまった」と明らかな嘘をついています。

今回の解雇事件は、西岸地区における入植者誘拐殺人事件を契機にイスラエルにおける排外主義的世論が過熱し、各地でパレスチナ人に対する襲撃事件が多発していた最中に起きたものでした。とりわけ事件の起きた7月2日は、前月に殺害されたユダヤ人入植者3人の葬儀があった日で、「復讐」として東エルサレムムハンマド・アブー・クデイル少年(写真右)が誘拐され、ガソリンを飲まされて焼き殺されるという凄惨な事件が起きた日でもありました。

解雇されたパレスチナ人のなかには、家族を養うため、12時間2交代制で、4日間働いて2日間休むという「4-2システム」(週平均56時間労働)の下、4〜5年もの間、この工場で働いてきた人もいました。そうした労働者を電話一本でゴミのように切り捨てるソーダストリーム社は、ムハンマド少年を焼き殺した犯人と同様の、パレスチナ人を同じ人間として見ることのできない排外主義イデオロギーに深く染まっていると言うべきでしょう。


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