福島みずほ参議院議員が「日・イスラエル投資協定」に関する質問主意書を提出


2015年1月19日、エルサレムの首相府で会談を行った安倍・ネタニヤフ両首脳。


11月24日、社民党福島みずほ参議院議員が、「日・イスラエル投資協定」の締結に向けた動きについて質問書主意書を提出しました。イスラエルとの投資協定は、2015年1月にエルサレムで行われた安倍・ネタニヤフ会談で「年内締結」を目指すとし、同年12月に「実質合意」が発表されていたものです。

さらに今年7月には、イスラエル経済産業省チーフ・サイエンティスト、アヴィ・ハッソン氏の「年内にも締結したい」との言葉が報道されましたが、当初予定されていたよりも明らかに時間がかかっています。

その理由の一つとして考えられるのが、イスラエル入植地に関わる企業活動の取り扱いです。イスラエル入植地の拡大によって二国家解決が実質的に破綻している現状への危機感を背景に、この数年、国連人権理事会では入植地における企業活動を規制する動きを強めています。2013年には、民間企業が「入植地から得られる企業利益を終結させる」よう、各国政府が適切な措置を取ることを要請する報告書が発表され、日本政府もその内容を支持する決議に賛成票を投じています。

したがって、日本がイスラエルと投資協定を結ぶのであれば、その裨益者からイスラエルの入植地ビジネスを除外するための条件を付けることが必要だと鋭く指摘するのが、福島議員の質問主意書です。すでにEUでは、2013年7月、入植地にかかわる団体および活動を助成等の対象から除外するガイドラインを、2015年11月には、イスラエル入植地産製品の原産地表示を「イスラエル」とせず、入植地製品であることが分かるようにすべきとするガイドラインを策定・公表してきています。「中東和平プロセス」を支持する立場から17億ドルもの対パレスチナODAを投入してきた日本政府であれば、当然、こうした国際社会の動きを見習い、投資協定が入植地ビジネスによって利用されないようにしなければならないでしょう。

以下、福島みずほ議員による質問主意書の全文です。

イスラエルとの経済・技術交流と同国のパレスチナ占領政策に関する質問主意書

昨年十二月、政府は日・イスラエル投資協定(以下「投資協定」という。)の実質合意を発表した。政府は投資協定を年内にも締結する方針と報じられている。また、本年六月には、イスラエルとのサイバーセキュリティに関する技術協力覚書(以下「技術協力覚書」という。)の年内締結に向けた動きも報じられている。しかしながら、イスラエルが被占領パレスチナ領で継続している入植地拡大は中東和平に対する深刻な障害となっており、これに対し、イスラエルの入植地ビジネスに対する規制を求める決議が国連人権理事会で採択されるなど、国際的な批判がかつてなく高まっている。日本も中東和平プロセスについて二国家解決の実現を支持する立場から、同理事会理事国であった時期には前述したような決議に賛成票を投じており、また、イスラエルの入植活動は国際法違反であるとする批判を繰り返し表明している。したがって、外交政策の一貫性と透明性という観点から、日本とイスラエルとの経済・技術交流を進める際には、国連人権理事会の報告書や決議で指摘されているイスラエルの入植地ビジネスに付随する法的・倫理的リスクを十分考慮することが必要とされる。

以上を踏まえ、以下質問する。

一 東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区ガザ地区およびゴラン高原は、投資協定および技術協力覚書の対象となり得るイスラエルの領域に含まれるか。

二 イスラエル入植地の住民や同入植地に活動拠点をもつ企業は投資協定の投資主体となり得るか。

三 イスラエル入植地に存する企業や不動産等は、投資協定の投資対象となり得るか。

四 国連人権理事会の調査団が二〇一三年に公表した「東エルサレムを含む被占領パレスチナ領におけるパレスチナ人民の市民的政治的経済的社会的文化的権利に対してイスラエル入植地が及ぼす影響について調査するための独立国際真相調査団報告」(A/HRC/22/63)第九十六項に列挙された入植地ビジネスに従事する企業は、投資協定の投資主体および投資対象となり得るか。

五 二〇一四年三月に国連人権理事会が採択した決議(A/HRC/RES/25/28)では、「個人と企業に対し、経済・金融活動や入植地におけるサービス提供、土地・建物の購入を含む、入植地に関わる活動に関わることに伴う、金融上及び風評上のリスク、法的なリスク、加えて個人に対する権利侵害の可能性についての情報を(各国政府が)提供することを求める」とされているが、投資協定および技術協力覚書の締結を含めた両国経済・技術交流の推進に際しては、同決議を施策に反映させる必要があると考えられるが、政府は具体的な措置を考えているか。

六 技術協力覚書に関しては、宮城県にある「制御システムセキュリティセンター」でイスラエル製品やソフトの試験を行う計画があるなどと報じられているが、イスラエルのサイバーセキュリティ企業の多くはイスラエル軍のサイバー部隊と緊密な関係を持っていることはよく知られている。このサイバー部隊は被占領パレスチナ領やイスラエル国外で非合法な諜報活動や破壊活動に従事していることが多くの関係者や報道によって指摘されている。最近では、イランのウラン濃縮施設に対するサイバー攻撃イスラエル軍のサイバー部隊である八二〇〇部隊が関与していることが明らかになっている。したがって、イスラエルのサイバーセキュリティ企業の技術を日本に導入する際には、経済・技術交流を通じてイスラエルの非合法な諜報活動や破壊活動に日本の資本や技術が利用されないよう細心の注意が必要になると考えられるが、この点に関してどのような対策を考えているか。

右質問する。

イスラエルとの経済・技術交流と同国のパレスチナ占領政策に関する質問主意書参議院HP)
【資料】国連人権理事会におけるイスラエル入植地ビジネスをめぐる最近の動きパレスチナ情報センター)
「違法なイスラエルの占領ビジネスをボイコット!11・30連続行動」呼びかけ