【必読】イスラエルの新聞ハアレツに掲載されたイスラエル・ボイコット論

違法イスラエル入植地製品を売りまくるため、ソーダストリーム社(と輸入代理店シナジートレーディング社)は、ボイコット・キャンペーンに対抗するクリーンなブランド・イメージを日本で広げようと、フェイスブック・ページを立ち上げるなど、懸命に努力されているようです。

他方、イスラエルでは、自国のレイシズムに対する厳しい批判で知られるギデオン・レヴィ記者が、イスラエル・ボイコットこそ、今のイスラエルの状況を救う最善の策だとする記事を発表しました。イスラエルのハアレツ紙は、大体日本の朝日新聞に相当する高級紙、と説明されることが多いのですが、このような記事が掲載されるだけ、イスラエルの方がマシなのかもしれません。





イスラエル愛国者最後の切り札はボイコットだ

外交上の次の一手が何ら効果をなさないという状況に陥っているイスラエルでは、
経済的ボイコットを呼びかけることが、愛国者たる必要条件となった。


原文:The Israeli patriot’s final refuge: boycott


ギデオン・レヴィ (ハアレツ 2013年7月14日)

この国の未来を真に憂う者ならば、今こそこの国に対する経済的ボイコットを支持する必要がある。

矛盾のある言葉だろうか。われわれは代替案を検討してきた。ボイコットは害悪が最も少なく、歴史的な利益も生みうる。あらゆる選択肢の中で最も非暴力主義的であるし、殺戮に陥る可能性は最も低い。困難であろうということは他の案と同様だが、他の案を採用することはより悪い結果をもたらすだろう。

現状が永遠に続くという想定に対して、ボイコットは、イスラエルに変革を促すための最も合理的な選択肢である。その効果はすでに立証済みだ。最近、ますます多くのイスラエル人がボイコットの脅威を感じるようになってきている。法相のツィッピー・リヴニがボイコットの拡散について警告し、その結果として外交の膠着状態を打開すべきだと呼びかけるとき、彼女が証明しているのはボイコットの必要性なのだ。したがって、リヴニも他のイスラエル愛国者も、ボイコット、投資・資本の引き揚げ、制裁措置(boycott, divestment and sanction: BDS)キャンペーンに参加しているのである。ようこそ、ボイコットクラブへ。

変革は内部からは始まらない。これは長らく明白なことであった。イスラエル人が占領に対するあらゆる対価を支払わない限り、あるいは少なくとも因果関係を認めない限り、占領を終わらせようなどという思いに駆られることはない。平均的なテルアビブの居住者が、何故わざわざヨルダン川西岸地域のジェニンやガザ地区のラファで起こっていることを気にかける必要があるのか。これらの地域はあまりに遠く、とりたてて興味をそそられることでもない。傲慢さと被害者意識が「選ばれし民」――世界で最も選ばれし、常に唯一の被害者――の中にはびこっている限り、世界が率直な態度で向き合ったところで何も変わりはしない。

それは反セム主義(反ユダヤ主義)だ、とわれわれは言う。世界はすべてわれわれに背いており、世界がわれわれに向ける態度に対してわれわれは何ら責任を追うことはない。また、それでも[イスラエルボイコット運動の世界的な高まりにもかかわらず]、イングランドの歌手クリフ・リチャードはここに来て演奏したのだ。イスラエルの世論のほとんどは現実――領土の内外における現実――と乖離している。そしてこの危険な乖離状態を維持しようとしている者たちがいる。パレスチナ人やアラブ人の人間性を奪い、悪者扱いすると同時に、人びとはナショナリズムによって洗脳されてすぎてしまって、正気を取り戻すことができないでいる。

変革は外部からしか始まり得ない。誰も――もちろん筆者も含め――新たな殺戮の連鎖など求めてはいない。パレスチナ人による非暴力の民衆蜂起は一つの選択肢だが、近いうちにイスラエルで変革が起こるかどうかは疑わしい。だからこそ、アメリカによる外交上の圧力やヨーロッパにおけるボイコットが必要となるのである。しかしアメリカ合衆国イスラエルに圧力をかけてくることはないだろう。オバマ政権がやってこなかったことを、合衆国政権がするなどといったことは考えられない。そこでヨーロッパの動きが重要となるのだ。法相のリヴニは、ヨーロッパにおける言説がイデオロギー的になってきていると述べた。彼女は自分の意味するところを理解している。彼女はまた、ヨーロッパのボイコットが西岸地域の入植地で作られた商品のみにとどまることはないだろうとも述べている。

ボイコットの対象を入植地の商品に限定する理由など何もない。占領地における商品とイスラエル製の商品との区別は人工的な創造物にすぎないからだ。直接の元凶は入植者ではなく、入植者の存在を築き上げてきた者たちである。イスラエル全体が入植地産業にどっぷりと浸かっているのだから、イスラエル全体が責任をとり、その対価を支払わなければならない。見て見ぬふりをしたいと思う者や、この問題を避けている者も含め、占領の影響を受けていない者などいない。われわれはみな入植者なのである。

経済的ボイコットの効果は南アフリカにおいて証明された。アパルトヘイト政策下の産業界が国家の指導部に近づいて、当時支配的であった状況はもはや続かないだろうと述べたとき、賽は投げられたのだ。もちろん、民衆の蜂起や、ネルソン・マンデラフレデリック・デクラークといった指導者たちの名声、また南アのスポーツのボイコットや外交上の孤立といった要素もまた、この嫌悪すべき体制の崩壊に寄与している。しかしこの雰囲気を作ったのは、産業界の働きなのである。

そしてこれは、ここイスラエルでもまた、起こりうる。イスラエル経済はボイコットに耐えられないだろう。世界におけるボイコットの動きが、最初は被害者意識や孤立主義ナショナリズムの高まりへとつながることは事実だろう。しかしそれも長くは続くまい。最終的には、態度が大きく変化することになりうるのだ。産業界が政府へと近づけば、政府はそれを聞き入れるだろうし、おそらくそれに従って対応することになる。ボイコットによる損失がイスラエル市民一人ひとりの財布に影響することになれば、より多くのイスラエル人が、おそらくはじめて、一体何事なのか、何が起こっているのかを自問することになるだろう。

ここイスラエルで人生のすべてを営み、イスラエルのボイコットなどしたこともなく、他国への移住を考えたこともない上に自らの存在すべてがこの国とつながっていると感じている者にとっては、ボイコットを呼びかけるなどということは難しく困難であり、ほとんど不可能でもある。私自身、ボイコットの呼びかけなどはしたことが無かった。ボイコットの動機となっているものが何であるのかは理解してきたし、こうした動機の正当性を述べることはできたが、そのような手段をとるべきだと他者に説いたことはなかったのだ。しかし、イスラエル次の一手が、外交的にもイデオロギー的にも極度の手詰まりに陥ろうとしている状況下では、ボイコットを呼びかけることこそが愛国者最後の切り札として求められているのである。


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