EU、イスラエル入植地への圧力を強化 ― 経済制裁への第一歩

7月16日、EUは、イスラエル入植地にかかわる団体および活動を援助対象から除外するガイドラインを公表しました。これは、6月30日に欧州委員会で採択されていたものです。ガイドラインの正式名称は、やたらと長く、「1967年以降にイスラエルが占領した領域におけるイスラエルの組織および活動の、2014年以降、EUによって資金提供される交付金、賞与金、金融商品における適用可能性にかんするガイドライン」。

このガイドラインは、従来からのEUの方針を明文化したものに過ぎず、また、EUイスラエルの関係を拘束するものではあれ、EU加盟国による個別の政策を拘束するものではありません。しかし、この動きに対するイスラエルの過剰な反発は、予想されたものとはいえ、同国の政治倫理がいかに国際的な常識から逸脱しているかを示す興味深いものとなっています。(日本も他人事ではありませんが・・・)

「境界問題について外部の指示は受けない」と開き直ったネタニヤフ首相はまだましです。自身が入植者でもあるウリ・アリエル財務相は、今回の動きを「レイシズム」と規定し、「かつてのヨーロッパにおけるユダヤ・ボイコットの名残」だと論難しています。さらに上手を行くのは、かつて、全入植地を統括するイェシャ協議会の事務局長であったナフタリ・ベネット産業貿易相で、EUのガイドラインは、「経済的なテロ攻撃」であり、「あらゆる和平交渉の可能性を破壊した」と息巻いています。(日本にも似たような排外主義的政治家はいますが・・・)

ところで、ソーダストリームを含めた入植地製品の「産地偽装問題」についても、EUによる是正措置の発動がほぼ確実視されていますが、これについては、イスラエルアメリカを通じて圧力をかけ、一時延期となっているようです。そうしたなかでの今回のEUの動きは、イスラエルにとっても、晴天の霹靂だったようです。

対イスラエルBDSキャンペーンの3つの課題であるB(ボイコット)、D(資本引き揚げ)、S(経済制裁)のなかでも、これまで目立った進展のなかった対イスラエル経済制裁に向けた小さな一歩が、世界中の市民の努力に後押しされるかたちで、ようやく踏み出されたと考えることができるでしょう。

なお、パレスチナ人の土地を奪い、生活を破壊するイスラエル入植地の建設がジュネーヴ第四条約違反の戦争犯罪に当たることは、多くの国連決議や国際司法裁判所等で繰り返し確認されており、その正当性を主張している国は世界中でイスラエルだけです。


■参考
ソーダストリームのどこが問題?
何ができる?
ソーダストリーム回収キャンペーン:知らずに買ってしまった!という方へ