ロジャー・ウォーターズからスカーレット・ヨハンソンへのメッセージ
パレスチナ被占領地の隔離壁に「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」からの一節を書くロジャー・ウォーターズ(2006年)
ピンクフロイドの元メンバー、ロジャー・ウォーターズがフェイスブック上で、ニール・ヤングとスカーレット・ヨハンソンに宛てて、イスラエルが行う人権侵害に目を向け、同国に対するボイコットに加わることを求める趣旨のメッセージを書き込みました。
ニール・ヤングは、7月にイスラエル公演を予定しており、イスラエルのアパルトヘイト政策への抗議の意思表示としてキャンセルを求める声が国際的に高まっています。スカーレット・ヨハンソンは、当サイトでも何度か取り上げているように、違法イスラエル入植地製品ソーダストリームの「ブランド大使」を引き受けたことが大きな批判を読んでいます。
ロジャー・ウォーターズがメッセージを書いたのと同じ2月1日、ほとんど死に体の中東和平交渉を仲介するケリー米国務長官は、パレスチナとの和平交渉が失敗すれば、イスラエルに対するボイコットが増えるとの警告を発しました。この発言にイスラエル政府は強く反発していますが、イスラエルのツィピ・リヴニ法相も、ケリーと全く同じ意見を繰り返し表明しており、対イスラエルBDS(ボイコット・資本引揚げ・経済制裁)キャンペーンの広がりに対する焦燥は隠せないようです。
以下、ロジャー・ウォーターズが書いた「a note from Roger」の日本語訳です。
先日、僕はニール・ヤングに一回、スカーレット・ヨハンソンに二度、個人的にメッセージを書き送った。これらはいずれも非公開だ。
残念ながら、どちらからも返事は来ていない。
だから僕は少しうろたえながら、このFacebookページを書いている。
ニール?僕はこの出来事にまつわる全てを、ずっと真剣に考えていくことになるだろう。僕たちはお互いのことを知っているわけではないけれど、君はいつも僕にとっての英雄の一人だった。だから僕は困惑しているんだ。
スカーレット?あぁ、スカーレット。僕が彼女に会ったのは1年くらい前のことだった。マディソン・スクウェア・ガーデンでクリームの再結成ライブをしたときのことだったかな。僕の記憶では、彼女は当時強烈な反ネオコン論者で、ブラックウォーター社(ディック・チェイニーがイラクに持っている傭兵会社)を痛烈にこき下ろしていた。そんな彼女を、真実と人権、法と愛を信仰する、強く誠実な若い女性だと思ってしまうのも無理はないだろう。白状すると、僕は彼女にちょっと惚れてたんだ。年寄りの馬鹿ほど馬鹿な奴はいないって自分でも呆れてしまうけどね。
それから数年が経って、スカーレットがオックスファム社を見切ってソーダストリーム社を選んだことは、知性の面でも政治の面でも、また礼儀の面からも、かつての彼女から180度方向転換してしまった行為だ。虐げられた者や抑圧された者、占領下にある者や二級市民の扱いを受ける者に心を寄せるわれわれの誰もが、とても合理的には説明し得ないようなことだと思う。
あの若いころのスカーレットと、今の彼女に、いくつかの質問をしたいと思う。スカーレット、たとえばイスラエル政府が、イスラエル南部のネゲブ砂漠にあるパレスチナ人遊牧民の村を、63回も焼き払ったことを君は知っているかい?63回だよ!一番最近は2013年の12月23日のことだ。この村は何千年にも渡ってこの地に暮らしてきた遊牧民たちの故郷だ。この遊牧民はもちろん、完全な市民権を持ったイスラエル市民だ。いや、「完全な」権利とは言いがたいな、「民主主義」のイスラエルには、非ユダヤ人を差別する法律が50もあるんだから。
僕はこうした法律を事細かに述べるつもりも(それらを調べたいなら、クネセットの法律全書を参照するといい)、そのほかのイスラエルの内政や外交におけるひどい人権侵害の全てを列挙する気もない。そうするにはスペースが足りないだろうから。
話を僕の友人スカーレット・ヨハンソンに戻そう。スカーレット、僕は君の投稿した弁解の記事を読んだ。その中で君は、工場労働に従事するパレスチナ人労働者が、イスラエルのユダヤ人と同等の給与や手当、そして「平等の権利」を得ていると主張したね。本当なのかい?平等の権利だって?
彼らにはユダヤ人と同等に、選挙権があるのかい?
道路にアクセス出来るのかい?
占領軍が支配する障壁を通り抜けるために何時間も待たされること無く、職場に行けるのかい?
清潔な飲水が手に入るのかい?
下水設備はあるのかい?
市民権があるのかい?
真夜中に家のドアを蹴飛ばして子どもたちを連れ去って行くような者の存在に怯えなくてもいいだけの権利はあるのかい?
根拠のない無期限の勾留に対して、不服を訴える権利はあるのかい?
1948年以前に所有していた財産や土地を再び手に入れる権利はあるのかい?
普通の、まともな人間としての家族生活を営む権利はあるのかい?
自決権はあるのかい?
古来からの意味深き文化的生活を発展し続けていく権利があるのかい?
これらの質問への答えに君が困ってしまうのなら、僕が代わりに答えてあげるよ。
答えはノーだ。彼らにはユダヤ人と同等の権利なんてどこにもない。
ソーダストリーム社の工場労働者は、上に書いた権利を何一つ持っていない。
とすれば、君が言う「平等な権利」って一体何のことなんだい?
スカーレット、君が可愛らしい人だということは紛れも無い事実だ。でも君がもし、ソーダストリーム社が平和の架け橋を作っていると思っているのならば、君が何の聞く耳も持たない人間だということもまた紛れも無い事実になってしまうことを、どうか忘れないでほしい。
愛をこめて
R.
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