イスラエルとの経済交流に関する質問書(大阪商工会議所宛)

関西の市民団体3団体が連名で、この間、イスラエルとの経済交流を加速させている大阪商工会議所に質問書を提出しています。何度か電話で催促・問い合わせをしているにも関わらず、大阪商工会議所からはいまだ回答はないとのことです。ここでは、まず質問書の内容を掲載します。

大阪商工会議所会頭 尾崎裕 様

イスラエルとの経済交流と同国のパレスチナ被占領地における国際法違反・戦争犯罪の抑止に関する質問書


 貴職におかれましては益々ご清栄のことと存じ申し上げます。

 さて、昨年11月16日、大阪商工会議所(以下、大商)と近畿経済産業局(以下、近畿経産局)がイスラエル大使館とともに「日本−イスラエル ビジネス交流フォーラム in 関西」というイベントを開かれた際、市民有志が要望書を提出し、パレスチナ人に対する継続的な人権侵害・戦争犯罪を繰り返しているイスラエルと経済関係を深めることの法的・倫理的リスクについて指摘しました。しかし、その後、この指摘が真剣に考慮された形跡はなく、3月5日〜9日には、大商および近畿経産局によって「関西・イスラエル ビジネス交流ミッション」が派遣され、その際、近畿経産局とイスラエル経済産業省との間には「経済協力に関する覚書」が結ばれました。私たちは、中東における公正な平和を願う市民として、この間の関西経済界におけるイスラエルとの関係強化の動きに強い懸念を持つことを改めてお伝えします。

 2012年2月に大商がイスラエル産業貿易労働省(現経済産業省)と交流促進のための共同宣言を結んで以降に限っても、イスラエルは、パレスチナ占領地ガザ地区において二度の大規模な攻撃を繰り返し、2500人以上に上る住民を殺害し、180万人の住民に対する非人道的封鎖を今も続けています。また、西岸地区においては国際法違反である入植地建設を継続し、パレスチナ人からの土地や水等の資源収奪を強化しています。

 このような組織的かつ深刻な犯罪行為が繰り返されていることに対し、イスラエルへの国際的な制裁を求める声が広がっています。2015年1月には、ガザ地区における戦争犯罪に関して国際刑事裁判所による予備審査が開始され、同裁判所によってイスラエルの戦争指導者が訴追される可能性が高まりつつあります。また、入植地に関しては、2013年1月に国連の調査団が、全入植地の撤退と入植地ビジネスの終結を勧告する報告書を出し、同年7月には、EUが、入植地にかかわる団体および活動を助成等の対象から除外するガイドラインを公表しました。さらに今年3月には、2013年の国連による勧告を実行するため、国連人権理事会が、入植地活動にかかわるすべての企業についてデータベースを作成し、毎年更新することを決議しました。同決議では、各国政府が自国企業に対し、占領地における人権侵害や入植地ビジネスに関与することによる風評上の、あるいは法的なリスクについて周知することも求められています。

 今後、日本企業の電子機器等がイスラエル企業を介して入植地関連設備(検問所や隔離壁を含む)に用いられるなどした場合、その日本企業の名前が国連の「ブラックリスト」に記載され、国際的な批判にさらされるというリスクが生じることになります。大阪商工会議所の会員であるシナジートレーディング社の場合、2011年にイスラエル入植地で生産されていたソーダストリームという家庭用炭酸水製造機の総輸入元となる契約を結びましたが、国内外からの批判を受け、2年余りで撤退を余儀なくされたということもありました。

 昨年の要望書でもお伝えした通り、企業の社会的責任が厳しく問われるようになった今日、日本の企業には、提携先の海外企業が人権侵害や戦争犯罪にかかわっていないかどうか、しっかりと見極める倫理的責任があります。「ビジネスと人権に関する指導原則」において、企業は「取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める」ことが求められていることに留意する必要があります。

 以上の認識にもとづき、以下5点、質問させていただきます。

1.2012年2月にイスラエル産業貿易労働省大阪商工会議所との間で締結した「共同宣言」の内容を開示してください。また、それらの内容にしたがって行われてきた活動や今後の予定について教えてください。

2.この間、多くのイスラエル企業との交流を進められているようですが、それらの企業がパレスチナ被占領地における人権侵害や違法行為に関わっているかどうかについて、国連人権理事会も求めている人権デューディリジェンスに基づく調査をしたことはありますか? また、今後する必要があると考えますか?

3.今年3月の国連人権理事会決議(A/HRC/RES/31/36)では、各国政府が、自国企業に被占領地における違法な入植地ビジネスや深刻な人権侵害に関与するリスクについて周知することを勧告しています。この決議を受けて、これまで何らかの取り組みをされましたか?

4.3月に行われた「関西・イスラエル・ビジネス交流ミッション」について、『日刊工業新聞』は「モノのインターネット(IoT)や、ロボティクス、サイバーセキュリティーをはじめ革新的なハイテクベンチャーが多いイスラエル企業と関西企業が連携し、相互補完関係を築くことでイノベーションにつなげたい考えだ」と報じています。しかし、こうした分野の技術開発は、パレスチナ人に対する長年にわたる占領支配の中で培った軍事・セキュリティ技術と表裏一体のものであることはよく知られています。パレスチナ人に対する日常的な人権侵害や殺戮を背景とした技術の売り込みに協力することに関して、どのようにお考えでしょうか?

5.イスラエル企業と日本企業との交流を進めるにあたり、パレスチナにおける人権侵害や国際法違反、戦争犯罪を助長しないために、これまでどのような配慮をされてきましたか?

以上、文書にてご回答をいただければ、大変ありがたく存じます。ご多忙とは存じますが、9月16日までに回答をいただきたく思いますので、ご検討のほどよろしくお願いいたします。


2016年8月31日

ATTAC関西
関西共同行動
パレスチナの平和を考える会