加速するイスラエル入植地建設と入植地製品禁輸に向けたEUの動き

ネタニヤフ首相は、先月の総選挙で続投が決まるとすぐに入植地建設続行の方針を明言し、2月11日には、早速、パレスチナ西岸地区の違法入植地ベイトエルにおける90戸の新たな入植者住宅の建設を承認しました。この住宅は、「治安上の理由」でパレスチナ人から収用された、入植地に隣接する土地に建てられる予定で、同じ入植地の近くのパレスチナ人私有地に勝手に建てられたアウトポスト(無認可入植地)から強制退去させられた右派入植者が入居するということです。膨張のための膨張としか説明しようのない暴挙といえます。



このあからさまな国際法蹂躙が表明された直後の2月13日から14日にかけて東京で開催された「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」では、情けないことに、岸田外相のスピーチや共同宣言等で、入植地の問題について言及されることは全くなく、「占領」という言葉が使われることさえもありませんでした。イスラエル占領政策によって発展の道を奪われているパレスチナ経済の崩壊を国際援助によって防ぐという寒々しい公金の無駄遣いを、東アジアで引き受けようというのが、どうやら今回の会議の趣旨のようです。

イスラエルシオニスト左派組織ピースナウによれば、2012年中に入札が行われた入植者住宅は3148戸にのぼり、2011年度の1321戸を大きく上回っています(下図参照)。同時期、西岸地区のパレスチナ人に対して行われた家屋破壊は、2012年に604件(2011年に613件)となっています(「家屋破壊に反対するイスラエル委員会」による調査)。

エルサレムを含む西岸地区におけるイスラエル入植地に関して、入札公示された住宅建設の戸数


日本と違い、ヨーロッパでは、こうした際限のないイスラエルの膨張政策に相当危機感を高めており、昨年の春あたりから、入植地製品の禁輸措置に向けた動きが政府レベル・市民レベル双方で活発化しています。

2月9日には、ガザ地区の農民の呼びかけに応えるかたちで、ヨーロッパ40都市において、イスラエル産農産物のボイコットを求める抗議行動が行われました




抗議行動のターゲットとなったイスラエル企業Mehadrinは違法入植地産の農産物を扱う最大の輸出企業で、日本には緑色のグレープフルーツ「スウィーティ―」を輸出しています。




そもそも、EUにおける違法入植地製品に関する公的な議論が本格化したのは、ドイツのソーダストリーム輸入代理店Britaが、入植地産の同製品が「EUイスラエル連合協定」にもとづく免税対象にはならないとしたハンブルク税関局を提訴したことに始まります。この裁判は、欧州司法裁判所に委譲され、2010年2月、「西岸地区で作られた製品は、EUイスラエル連合協定が適用される領域内の対象とは見なされない」との判断が下されました。

以下、その後の入植地製品問題に関する進展をまとめてみました。

  • 2010年2月 欧州司法裁判所、入植地製品は、EU-イスラエル連合協定にもとづく関税控除の対象とはならないとの判決。
  • 2010年5月 日本政府外務省、「パレスチナの平和を考える会」との協議で「イスラエル入植地は、国際法上違法であり、イスラエル領でない」「入植地産のものが、イスラエル産と表示されているのであれば、正確な表示とは言えない」と言明。違法入植地産製品の法的取り扱いについて省庁間で調整すると回答。
  • 2011年9月 ロンドンのAHAVA専門店が市民からの抗議の声を受けて撤退。
  • 2012年5月 EU外務理事会、「現行のEUの法律および相互的な取り決めで、入植地製品に適用されるものについて、完全かつ効果的な履行を確実に行うよう、働きかけること」を確認。
  • 2012年12月 EU外務理事会、入植地製品について5月と同内容の文言を再度言明。
  • 2013年1月 国連人権理事会の調査団、全入植地の撤退と入植地ビジネスの終結を要請する報告書を公表

■参考
ソーダストリームのどこが問題?
何ができる?
ソーダストリーム回収キャンペーン:知らずに買ってしまった!という方へ