イスラエル入植地に関するEUガイドラインをめぐる攻防


アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表と握手をする微妙な表情のネタニヤフ首相(2013年8月5日)


パレスチナ被占領地域におけるイスラエル入植地問題をめぐり、国際的な攻防が激しくなっています。その背景には、国際的な対イスラエルBDS(ボイコット・資本引き揚げ・経済制裁)キャンペーンを通じた市民社会の声の高まりがあります。ソーダストリームの製造・販売がビジネスとして存続し得るかどうかは、この攻防の成り行き次第だといえるでしょう。

以前、このサイトでもお伝えしたとおり、この7月には、EUが、イスラエル入植地にかかわる団体・企業への資金援助を禁じるガイドラインを公表しました。2014年1月以降の資金援助を対象としたこのガイドラインの最初の適用対象として焦点化されているのが、2014年から2020年にかけてEUが実施する800億ユーロ(約10兆円!)規模の研究投資プログラム「ホライズン2020」に、イスラエルが加わるかどうかの問題です。ガイドラインによれば、EUの助成を受けるには、助成金パレスチナ占領地における活動には用いないことを確約する必要があるため、ネタニヤフ首相は、この条件の下では計画に参加しないことを表明しています。

9月12日には、この問題について、ブリュッセルEUイスラエルの担当者が2度目の話し合いを持ちましたが、結論は出ませんでした。同日、ブリュッセルEU議会の建物では、入植政策支持の集会が持たれ、極右政党「ユダヤの家」の議員が、ヨーロッパで「反ユダヤ主義が広がっている」と息巻くなど、ガイドラインの凍結・見直しを求めるイスラエルのロビイング活動は今後ますます激しくなりそうです。

他方、入植政策への固執は、和平への道を閉ざすものであるとして、EUのガイドラインの予定通りの実施を求める声EUおよびイスラエル国内の有力者から上がっています。

EUからは、元EU共通外交・安全保障政策上級代表ハビエル・ソラナ、元オーストリア外相ベニタ・フェレロ=ワルドナー、元フランス外相ユベール・ヴェドリーヌ、元アイルランド首相ジョン・ブルードン、元オランダ首相ドリース・ファン・アフト、元スペイン外相ミゲル・モラティノスなど、15人の署名による手紙が、現EU外務・安全保障政策上級代表キャサリン・アシュトン宛に9月16日付で送られています。

また、同じ日にイスラエルの600人以上の有識者が、同趣旨の手紙を発表しています。署名者には、元検事総長のミハエル・ベンヤイル、元南アフリカ大使イラン・バルーフ、ヘブライ大学教授ゼエヴ・シュテルンヘル、エルサレム賞受賞者の彫刻家ダニ・カラヴァンなどが含まれており、イスラエルの「リベラリスト」の中でも、同国の右傾化への懸念が広がっていることが分かります。

この数年、経済交流だけでなく、日本とイスラエルの学術交流も次第に深まりつつあります。現在のイスラエルEUの動向は、日本の市民にとっても他人事とはいえないでしょう(参考:戦略的国際科学技術協力推進事業:イスラエル)。


■参考
ソーダストリームのどこが問題?
何ができる?
ソーダストリーム回収キャンペーン:知らずに買ってしまった!という方へ