近畿経済産業局からの不十分な回答と意見交換の概要

先月6日に行われた、イスラエルとの経済交流に関する関西の市民団体と近畿経済産業局との話し合いの概要が、「パレスチナの平和を考える会」のホームページに掲載されたので、お知らせします。

「イスラエルとの経済交流と同国のパレスチナ被占領地における国際法違反・戦争犯罪の抑止に関する質問書」に対する近畿経済産業局の回答と市民団体との話し合いの概要

意見交換の中では、入植地で生産されていたソーダストリームの日本での販売に関する議論もされ、「明らかな入植地ビジネス」については国連人権理事会決議にもとづく「助言」を対象企業に対して行うとの注目すべき答弁も見受けられます。つまり、仮にソーダストリームの工場が入植地から撤退しておらず、また、当初輸入代理店となっていたシナジートレーディング社が今も契約を継続していれば、近畿経産局はシナジートレーディング社に対して、ソーダストリームの輸入販売に伴う法的および人権上のリスクについて「助言」をするということになります。

もちろん、イスラエルに対するボイコット運動は、入植地ビジネスのみに集約されるべきものではなく、イスラエル領内ネゲヴ(ナカブ)の工業団地に工場を移転させたソーダストリーム社が倫理的問題を払拭したわけではありません。現在、ネゲヴ地方では、イスラエル領内のパレスチナ人に対する強制土地収用政策・民族浄化政策が集中的に行われており、ソーダストリームが移転したイダン・ハ=ネゲヴ工業団地もその例外ではないからです。

加えて言えば、国連やEUにおいて入植地問題がクローズアップされている最大の理由は、「ユダヤ人国家としてのイスラエル」を存続させるための二国家解決が入植地の拡大によって事実上不可能になりつつあることに、ようやく欧米諸国の政治指導者が気付き始めたことにあると言えます。つまり、この間の欧米諸国によるイスラエル批判の論調は、シオニズムを批判するがゆえの入植地批判ではなく、シオニズムを擁護するがゆえの入植地批判という性格を強く帯びているわけです。

しかし、すでに現実は二国家解決にとって「手遅れ」ともいえる状況にあり、「一国家的現実」がパレスチナイスラエルを覆っています。このことはイスラエルパレスチナ人政策が単なる軍事占領ではなく、一国家の統治領域内におけるアパルトヘイト政策という性格をもつことを白日のもとにさらしつつあります。この現実を踏まえれば、入植地ビジネスに対する国際的なボイコットの動きは、二国家解決案の延命策としてではなく、イスラエルパレスチナ全領域におけるアパルトヘイト廃絶に向けた、パレスチナ人の解放運動に対するエンパワーメントの一環として捉えるべきものと考えられるでしょう。

以上に述べたように、イスラエルの入植政策は結果的に「ユダヤ人国家としてのイスラエル」に対する国際的正当性を根底から揺るがしつつあるわけですが、安倍政権はそのあたりの事情に全く関心をもつことなく、イスラエルとの関係強化にまい進し、年内には投資協定を締結するとも報じられています。欧米諸国がようやくイスラエル占領政策のもたらしている現実に気付き、対策を打とうとしているタイミングにおいて、日本は、まったく逆行する政策をとり、占領の固定化(〜イスラエル国家の非正当化)の道を突き進むネタニヤフ政権の能天気なパートナーとなっています。日本政府は、狭い国益の観念に捕らわれずに、中東の現実を直視した外交政策を構築すべきでしょう。


【資料】国連人権理事会におけるイスラエル入植地ビジネスをめぐる最近の動きパレスチナ情報センター)