イスラエルと共に右傾化するソーダストリーム社


パレスチナ人の土地を奪い続けるイスラエル入植地の拡大
(International Middle East Media Center)

ソーダストリーム本社のホームページ(英語)には、「私達の工場について」(About the Plant)という極めて政治的な文章が掲載されています。ボイコット運動が始まった当初、ソーダストリーム社は、入植地とのかかわりについてできるだけ隠蔽しようとしていました。そのため、入植地の中にあるミショール・アドミーム工業団地の工場が主力工場であること隠し、他にいくつもある工場の一つに過ぎないという事実を歪める主張をしていたのです。

ところがヨーロッパを中心に入植地製品に対する国際的批判が強まるにつれ、同社は、パレスチナ人に雇用の機会を与える入植地こそ平和に貢献するものであるという、イスラエル極右政党の政治的レトリックを採用し始めました。「私たちの工場について」で展開されている論理は、西岸地区併合を唱える「ユダヤの家」党首ナフタリ・ベネット(産業貿易労働大臣)の「入植地ビジネスは、民族共生に貢献している」という論理と全く同じものです。つまり、占領地への入植活動を禁じる国際人道法(ジュネーブ第4条約)を意図的に無視・蹂躙することをいわば社是として明確化したのです。また、「エコ」を売り物とする私企業としては異様ともいえるボイコット運動に対する攻撃的かつ誇大妄想的な論調もまた、この間のイスラエル政府の姿勢を反映していると考えられます。以下は、そのソーダストリーム社の勇ましい「政治宣言」とも言える文書からの翻訳抜粋です。

私達はこの施設(ソーダストリームの工場)がイスラエル人とパレスチナ人とをつなぐ橋を築いていることを誇りにしています。惑わされた多くの活動家が、この施設について、その(入植地内にあるという)位置を理由として攻撃しています。この施設をいわゆる「入植地経済」と関係づけることでその正当性を傷つけようとしたり、イスラエルを悪魔化したりするために、嘘をねつ造する政治活動家さえもいます。これらの活動家のなかには、国際的な人道組織を騙ってそのような行為を行っている者もいます。しかし実際のところ、彼らの多くは人道とは全く関係のない動機にもとづく政治組織やテロ関係組織によって資金援助されていたり、逆にそうした組織を援助したりしているのです。これらのグループは、私達にこの施設の閉鎖を求めています。そうすることで1300人の従業員の仕事を奪い、(彼らの家族を含めた)5000人のパレスチナ人を失業と絶望の淵に送り込もうとしています。私達はこのような批判に抵抗し、疑わしい人道的理由をもって私達のパレスチナ人従業員が犠牲となることを防ぐために、できることはすべてするつもりです。

なお、日本におけるソーダストリームの輸入業務は、2011年の販売開始以来シナジートレーディング社が担っていましたが、この商品が極めて深刻な問題を抱えていることに気付いたためか、今年4月1日より、新たに立ち上げられたソーダ・ストリーム株式会社に業務を移管しています。この新会社はイスラエルソーダストリーム社の日本法人で、登記情報によれば代表取締役である笈川義徳氏(イスラエル在住)と大木善弘氏以外の役員は、イスラエル本社CEOであるダニエル・ビルンバウム氏を含め、全員が本社役員と兼務のイスラエル人のようです。

したがって、当然この日本法人も上に述べたような国際法違反を奨励する政治姿勢を持って日本で営業活動をしているといえます。例えば、シナジートレーディング社から引き継がれたソーダストリームの日本語サイトには、「ソーダ・ストリーム株式会社の販売する製品は、イスラエル国内において、法令を遵守して製造され、日本及び世界各国において適法に販売されております」という一文が掲げられています。業務移管前のサイトにはイスラエルへの言及は一切ありませんでした。この一文は、西岸地区内の入植地はパレスチナ領ではなくイスラエル領であるという、国際法を無視したソーダストリーム社の確信犯的主張を日本法人として改めて表明したものだといえます。

ところでイスラエルは、ファタハ・ハマース暫定統一内閣の成立に対する報復措置として、6月4日、東エルサレムを含む西岸地区各地の入植地に1500戸以上のユダヤ人住宅建設の入札を公示しました(さらにそれとは別に凍結中であった1800戸分の入植地拡大計画の再開も決定)。それに対し、日本政府は、以下のような文言を含む比較的強い論調の外務報道官談話を発表しています。

入植活動は国際法違反であり,我が国は,イスラエル政府に対し入植活動の完全凍結を繰り返し呼びかけてきました。我が国は,改めてイスラエル政府に対し,東エルサレム及び西岸の現状を変更するような一方的な行為を控えること,及び和平プロセスの進展のために,本件新規住宅建設計画が実施されないことを強く求めます。
※「東エルサレム及び西岸におけるユダヤ人住宅建設計画について」(外務報道官談話、2014年6月6日)より

こうした内容の談話が発表されるのは今年に入ってすでに3回目のことです。2013年には5回、2011年と2012年にはそれぞれ7回と、加速するイスラエルの入植活動に対し、その都度非難する談話が発表されています。そして、その大部分において、入植活動が国際法違反であることにも言及されています。ソーダストリーム日本法人の企業活動は、このような「一貫した」日本政府のイスラエル入植地に対する姿勢に真っ向から対立するものです。これらの談話が単なるリップサービスでないのであれば、政府は日本国内で流通しているイスラエル入植地製品をいつまでも放置すべきではありません。もちろん、百貨店や家電量販店などのソーダストリーム売店は、具体的な国からの指導や規制がなくとも、パレスチナ人に対する土地略奪・人権侵害に加担するソーダストリームの取り扱いは、自発的に中止すべきでしょう。


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