イスラエル政府が擁護する入植者のヘイトクライム

1月10日、イスラエル住宅省は、東エルサレムを含む西岸地区の入植地に計1400戸の住宅を建設するための入札を実施することを発表しました。ソーダストリームの工場があるマアレ・アドミーム入植地も今回の入札の対象に含まれていると考えられます。ネタニヤフ政権下において、すでに計1万1047戸の入植地住宅の建設が許可されたことになります。


パレスチナ西岸地区を浸食するイスラエル入植地(青色)。
黄色と茶色の地域がパレスチナ自治区

こうした動きは、パレスチナ人に対する強制排除政策と表裏一体のものであり、オスロ合意で「暫定的」にイスラエルの占領継続が認められた「C地区」(上の地図で白い部分)を併合し、パレスチナ人を、隔離壁と検問所で管理されたいくつもの飛び地の中に押し込めようとする「ゲットー化政策」の一環であると考えられます。昨年12月29日には、閣内の立法委員会が、西岸地区の3割近くを占め、その約9割がC地区とされているヨルダン渓谷の併合を承認しました。


今も続くヨルダン渓谷における家屋破壊
(Photo: 'Atef Abu A-rub, B'Tselem, 8 Jan. 2014)

このような動きと並行して、西岸地区では入植者によるパレスチナ住民への暴力事件が多発しています。特にこの数年、入植地の若者達による過激なヘイトクライムが社会的関心を集めています。彼らは、アウトポストと呼ばれる政府非公認の入植地を新たに作り、そうした動きを政府が少しでも抑制しようとすると、抗議の意思表示として、「プライス・タグ(値札)」と呼ばれる「復讐」を周囲のパレスチナ人の村への襲撃というかたちで行っています。集団で村に押しかけ、オリーブ畑やモスクに放火したり、車のタイヤを切り裂いたり、時には実弾でパレスチナ人を狙撃します。パレスチナ人の家に「アラブ人をガス室へ」といった落書きが書かれることもあります。


ナブルス近郊の村で入植者に放火されたパレスチナ人の車
(Photo: AFP/Jaafar Ashtiyeh, 8 Jan. 2014)

イスラエル政府は表向きには、こうしたヘイトクライムを批判するポーズを見せていますが、実際には、イスラエルの軍や警察は彼らを真剣に取り締まろうとはせず、むしろ、入植者の暴力を援護し、暴力を阻止しようとするパレスチナ人を逮捕しています。以下の、イスラエル平和団体ブツェレムが発表したビデオには、今月6日、西岸地区ナブルス近郊のイツハル入植地の入植者がイスラエル軍に付き添われながら、近隣のウーリーフ村を襲撃する様子が映されています。

イスラエルでは、まるで銃器を与えられた「在特会」とでもいうようなレイシスト集団が、入植地拡大政策のなかで養成されており、彼らの排外主義イデオロギーイスラエルの政治全体を規定する力を持ちつつあります。現在のイスラエル政府には8名の入植者が入閣しています。そして、入植政策を統括する立場にあるウリ・アリエル住宅相自身が、若者層において最大の支持率を誇る極右政党「ユダヤ人の家」に所属する入植者なのです。


射撃訓練を行うプネイ・ケデム入植地の家族
(Photo: Nati Shohat/Flash90)

つまり、今のイスラエル政府が、自発的に入植地拡大政策をあらためることはあり得ないのです。パレスチナ人を苦しめる排外主義の動きを止めるには、イスラエルに対し国際法違反の入植地をただちに撤去するよう、強い国際的圧力をかける必要があります。入植者の暴力に抵抗するパレスチナ人およびイスラエルの平和活動家を支えるためにも、入植地製品ソーダストリームに対するボイコット運動をはじめとした国際的な連帯の取組をより強化することが求められています。


【参考記事】
ソーダストリームのどこが問題?
何ができる?
ソーダストリーム回収キャンペーン:知らずに買ってしまった!という方へ
ソーダストリームが違反している可能性のある国内法規

【お薦め動画】
パレスチナからのメッセージ:ソーダストリームを買わないで下さい。
なぜソーダストリームを買ってはいけないのか? ―パレスチナ人にとっての入植地
なぜソーダストリームを買ってはいけないのか? ―パレスチナ人にとっての入植地(その2)
なぜソーダストリームを買ってはいけないのか?(その3)
なぜソーダストリームを買ってはいけないのか?(エドワード・サイード編)